2011.10.24更新

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先天性心疾患・構造異常 / 心電図異常・不整脈 / 心筋炎 / 肥大型心筋症
希少疾患 / 症候群と心筋疾患 / 拡張型心筋症・拘束型心筋症

症候群と心筋疾患

座長:住友直方(日本大学医学部 小児科学系小児科学分野)


重度の閉塞性肥大型心筋症と冠動脈拡張を伴うLEOPARD症候群の男児例

  聖マリアンナ医科大学 小児科 桜井研三、中野茉莉江、有馬正貴、後藤建次郎、栗原八千代、麻生健太郎

LEOPARD症候群(LS)は稀な症候群であり、心血管系の合併症として肥大型心筋症、肺動脈狭窄症が知られている。今回我々は閉塞性肥大型心筋症(HOCM)と冠動脈拡張(CD)を伴うLSの一例を経験した。
【症例】新生児期に心雑音に気付かれHOCMと診断された。表現型よりNoonan症候群(NS)と診断されていたが、10歳頃から多発性黒子を認めるようになり、遺伝子解析を行ったところPTPN11 Exon 13にLSの既知の遺伝子変異が確認された。HOCMに対しβ遮断剤などの内服治療を行っていたが、心エコー所見に変化は認められず、高度のCDも認められるようになった。心臓カテーテル検査を行ったところ高度の左室流出路狭窄と両側の冠動脈拡張を確認した。
【考案】LS、NSともに細胞内シグナル伝達経路であるRAS/MAPKの構成分子遺伝子の異常疾患であり表現型も共通する部分が多い。文献検索ではLSとCD合併の報告が3例、NSとCD合併が2例確認できた。CDはRAS/MAPKシグナル伝達異常に起因する疾患の共通した表現型である可能性が高いと思われた。



肥大型心筋症を伴ったDown症候群の1例

  大阪大学大学院医学系研究科 小児科 高橋邦彦 小垣滋豊 市森裕章 内川俊毅 三原聖子 岡田陽子 石田秀和 那波伸敏 馬殿洋樹 坂野公彦 北畠康司 和田和子 大薗恵一

【緒言】Down症候群で先天性心疾患を伴わない肥大型心筋症の報告が散見される。今回、一過性骨髄異常増殖症(TAM)に非対称性肥大を伴う肥大型心筋症を合併したDown症候群の1例を経験した。
【症例】在胎35週、2128gで出生した男児。生直後肝脾腫が存在し白血球増多76940(芽球19.5%)を認めTAMと診断し交換輸血施行。心エコー検査で先天性心疾患は認めず、非対称性肥大を伴う左室壁肥厚および拡張障害を認め、肥大型心筋症の合併と診断した。芽球は日齢9に消失したが肝機能不全が遷延し、敗血症のため日齢22に永眠した。解剖では、心室中隔は9mmと著明に肥厚し、軽度の心筋細胞肥大を認めるが錯綜配列や間質線維化は認めず、巨核芽球様大型細胞をごく少数認めた。
【まとめ】Down症候群における肥大型心筋症の発症頻度が、正常核型にみられる頻度と同等であるか不明であり、また肥大のメカニズムも不明である。今後の解明が望まれる。



脂肪蓄積性ミオパチーから心不全症状発症前に診断に至ったBarth症候群の一例

  北海道大学医学部 小児科 武田充人、山田雅文、山澤弘州、武井黄太、古川卓郎、上野倫彦、有賀正
  市立札幌病院 須藤章
  東京女子医大循環器 小児科 泉岳
  国立精神神経センター 西野一三

Barth症候群 (BTHS)は先天性ミオパチー、好中球減少、成長障害、心筋症を特徴とするX連鎖性疾患で、Xq28上のTAZ遺伝子変異により男児に発症することが知られている。心不全発症前の本症の診断は予後にとって重要である一方、孤発例で心不全症状が明らかでない場合はBTHSと診断されにくい疾患であることでも知られている。今回我々は心不全発症前にBTHS と診断した13歳男児孤発例を経験した。診断のきっかけとなった所見は骨格筋生検における脂肪蓄積性ミオパチー、血漿BNP高値、および心エコー、心臓MRIによる孤立性左室心筋緻密化障害の診断であった。TAZ遺伝子解析にてExon8内に点変異 (p.Gly216Arg) を認め本症と確定診断した。心保護療法の早期導入により心不全進行を予防しえた点で本症の早期診断の意義は大きいと思われ、報告する。



心筋構築異常を認めたTimothy症候群

  慶應義塾大学医学部 小児科 宮原瑤子、河野一樹、小柳喬幸、古道一樹、安田幹、石崎怜奈、柴田映道、福島裕之、前田潤、山岸敬幸

【背景】Timothy症候群は、L型Caチャネル遺伝子異常を原因とする予後不良な疾患である。
【症例】1か月女児。胎児超音波検査により2:1伝導の房室ブロックに伴う徐脈(約60bpm)あり。出生後2:1房室ブロックに加えて著明なQT延長(QTc=0.685)、上下肢の合指/趾を認めTimothy症候群と診断。日齢1に心外膜リードによるペースメーカー埋め込み術をおこなった。手術中short run VTがあり、塩酸ランジオロールを開始したが、血圧が低下し、心エコー検査で心収縮力の低下と心筋構築の異常が確認されたため、同剤を中止しカテコラミンによりサポートした。その後、有意な不整脈はなく、心収縮力も改善したため、日齢3にサポートを中止し、利尿剤と酸素投与で経過観察した。成長に伴い体動が多くなるとshort run VTが頻発し、硫酸マグネシウム、ベータ遮断薬、メキシレチン、Ca拮抗薬、鎮静薬を漸増投与しているが、short run VTは持続している。
【考察】Timothy症候群の報告例は少なく、臨床像、治療法には未知な部分が多い。文献的考察をまじえて報告する。

日本小児心筋疾患学会事務局

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