2011.10.24更新

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先天性心疾患・構造異常 / 心電図異常・不整脈 / 心筋炎 / 肥大型心筋症
希少疾患 / 症候群と心筋疾患 / 拡張型心筋症・拘束型心筋症

希少疾患

座長:堀米仁志(筑波大学付属病院 小児科)


わが国の小児期心筋疾患の頻度 ~過去6年間の希少疾患調査から~

  希少疾患登録制度委員会 市田蕗子、佐地勉
  小児期発症心疾患実態調査委員会 梶野浩樹
  学術委員会 小川俊一
  理事長 中西敏雄

小児循環器学会希少疾患登録制度委員会で施行した「稀少疾患サーベイランス調査」をもとに、わが国における小児期心筋疾患の頻度に関して検討を行った。
【対象および方法】H17-22年の各年に発症あるいは診断した症例。調査対象:小児循環器外来のある施設にアンケートを郵送し調査を依頼。発症数のサーベイランスが第一義的であり、調査項目は生死、年齢、性別、家族内発症など必要最低限度の内容とした。対象疾患のうち心筋疾患は、DCM、HCM、RCM、ミトコンドリア心筋症、ARVC、NCLV、EFE、Pompe病、急性心筋炎(劇症型を含む)、リウマチ性心炎の10疾患。
【結果】全配布施設158-193施設中、回答率は73-93%と良好であった。年間発症が最も多いのは、急性心筋炎で平均57例、次いでDCM 48例、HCM 42例、LVNC 31例であった。これは、欧米からの報告と同様の傾向である。また、死亡率に関しては、急性心筋炎で平均 22%と依然高く、次いでDCM 15%、LVNC 8%、HCM 5%であった。年間発症数10例以下の希少疾患は、RCM、ミトコンドリア心筋症、ARVC、EFE、Pompe病、リウマチ性心炎であった。
【結語】平成17年~22年の6年間を比較すると、いずれの疾患も安定した報告数であり、アンケートの回収率も高く、信頼できる調査結果と思われた。



中性脂肪蓄積心筋血管症調査:日本小児心筋疾患学会の先生方へのお願い

  厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 中性脂肪蓄積心筋血管症研究班 班長
  大阪大学医学部附属病院 循環器内科 平野賢一

【背景】中性脂肪蓄積心筋血管症 (Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy, TGCV)は、2008年、わが国の心臓移植症例より見出された新規疾患単位です。心筋及び冠状動脈に中性脂肪が蓄積する結果、重症心不全、冠動脈硬化を来す難病です (Hirano K, et al. N Engl J Med. 2008)。
【方法と結果】2009年、厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 TGCV研究班が立ち上がり(http://www.nanbyou.or.jp/entry/1206)、私どもの研究班の活動の結果、原発性TGCVは、国内外で25例を把握致しました。そのうち、23例において、細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるAdipose triglyceride lipase (ATGL)の遺伝子変異が確認されています。わが国の9例中5例は、20-60才代ですでに心臓死。生存している4例中、2例は40才代で心移植を受けており、極めて重篤な心病変を来すことが明らかとなっております。
【考察と展望】研究班では本症に対して、中鎖脂肪酸を用いた栄養療法を開発し、来年度から臨床試験を実施する準備を進めております。しかしながら、小児科領域における本症の実態は全く明らかではありません。今回、本症の実態調査へのご協力を先生方にお願いしたいと考え、発表させていただきます。



長期間経過観察した孤立性左室心筋緻密化障害の双胎例

  茨城県立こども病院 小児循環器科 塩野淳子、村上卓
  みらい平こどもクリニック 磯部剛志
  富山大学医学部小児科 市田蕗子

【症例】一卵性双胎女性。
【家族歴】実父が同疾患(後に判明)で脳梗塞発症。父方祖父が(当時)拡張型心筋症で死亡。(離婚のため詳細不明。)他の同胞なし。
【経過】早期産・低出生体重児のためNICUに入院した際、心電図異常から肥大型心筋症と診断された。1歳4か月時転居のため当院を受診した。初診時から心エコーでFS20%前後と低下あり、心内膜の不整が目立った。また、特異顔貌、発達遅滞が認められた。4歳頃に孤立性左室心筋緻密化障害と診断し、遺伝子検査でLDB3変異と判明した。心不全症状はみられなかったが、15歳時からアスピリンとACE阻害剤内服、18歳時からβ遮断薬内服を開始した。2人とも手のしびれを訴えることあったが、画像上で脳梗塞の所見はなかった。高校卒業を機に循環器内科へ紹介した。
【まとめ】診断概念が確立する前ではあるが濃厚な家族歴が疑われた。左室収縮力低下の進行はなく、内服治療開始のタイミングに苦慮した。



先天性グリコシル化異常症(CGD)-Iaに合併した肥大型心筋症の1例

  大阪医科大学附属病院 小児科 岸勘太、井上奈緒、島川修一、森保彦、玉井浩

【背景】CGD-IaはPMM2の遺伝子異常が原因で、糖蛋白の機能異常を来し、多彩な症状を呈する疾患である。肥大型心筋症(HCM)の合併は知られているが、その臨床像は充分解明されていない。
【症例】4才 男児 2才時にCDG-Iaの診断。
【経過】けいれん重積を認め救急搬送。抗けいれん薬でけいれん頓挫するも、200回/分以上の洞性頻脈を呈し、心室頻拍を認めた。さらに、心エコーで左室壁運動の低下(LVSF:21%)があり、急性循環不全を認めた。ランジオロール・ミルリノンで、心室頻拍消失し徐々に循環動態も安定。第24病日、壁運動は改善(LVSF:34%)したが、左室中隔壁厚:8.9mm(Z=2.5)・後壁厚:5.6mm(Z=1.0)と非対称性の心筋肥大が顕在化しHCMと診断。現在カルベジロール内服で経過観察中。
【結語】幼児期発症のCDG-Iaに合併したHCMの症例を経験した。CDG-Iaでは循環器的な定期フォローが重要である。

日本小児心筋疾患学会事務局

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